放射線防護技術編
獣医療における放射線防護の基礎知識
3.小動物のX線撮影 参考ムービーはこちら

(7)測定

    ア X 線の測定方法
     X 線装置からの直接放射線(一次X 線)や散乱線(二次X 線)は、さまざまなエネルギー成分を含んでいるため、正確な測定のためにはX 線用の測定器を用いる必要があります。また、場所の測定に用いるサーベイメータ類は、専門の機関に定期的な校正を依頼するなど、適切に管理することが重要です。
    イ 場所の測定
     場所(施設)の測定に用いる測定器には、電離箱型のサーベイメータが推奨されます。施設境界などのバックグラウンドレベルの線量を測定する場合には、高感度のシンチレーション型サーベイメータ等を使用してもよいでしょう。測定は、法に規定された場所と時期について行わなければなりませんが、それ以外にも線量率が高くなる可能性のある場所について実施することが望まれます。  X 線装置の漏洩線量測定については、定期的に専門の業者に依頼する方がよいでしょう。
    ウ 個人の被ばくの測定
     個人の被ばく線量(実効線量)を正確に把握するためには、ガラス線量計、光刺激ルミネッセンス線量計、フィルムバッジなどの小型で軽量な測定器が適しています。これらの個人被ばくモニタリング用の測定器は、専門の測定機関に依頼しましょう。もし、半導体型の小型線量計を購入して日常の個人測定を行う場合には、必ずX 線用の製品を用い、校正を定期的に行うなどの配慮が必要です。また、個人線量測定用の線量計を複数の人で共用してはいけません。
     ガラス線量計などの測定は、毎月の単位で測定を依頼することが望ましいです。なぜならば、月毎に被ばく線量を管理することによって、被ばく線量が高くなった場合に、X 線作業の内容を見直すことができるからです。
     ガラス線量計などを着用している場合であっても、短期間の被ばくが多くなると想定される場合には、ポケット線量計などの補助的な線量計を重ねて装着することが望まれます。これによって作業ごとの被ばく線量を把握することができ、被ばくを低減するための作業の見直しが可能となります。
     個人の実効線量測定用の線量計の装着部位は、男子では胸部、女子では腹部です。防護衣を着用する場合では、線量計を防護衣の内側に着けることを忘れないようにして下さい。
     X 線透視診断を行うことにより、腕などに不均等被ばくが生じるおそれがある時には、実効線量測定用の線量計以外に、頭頸部や前腕部などで等価線量の測定を行う必要があります。ただし、実効線量測定用の測定器を等価線量測定の目的に流用してはいけません。



参考資料3 表1 サーベイ
メーターの種類と使用目的

参考資料4-6 漏えい線量



参考資料3-7
施設のモニタリング







参考資料3-8
個人線量モニタリング













II - 3(1) 等価線量、
(2)実行線量

(8)X 線撮影時の留意事項

    ア X 線診療時の被ばくは、X 線管からの直接放射線(一次X 線)と、一次X 線によりX 線装置、被写体、撮影台から発生する散乱線(二次X 線)により生じます。被ばく線量は一次X 線の方が高くなるので、放射線診療従事者は一次X 線が直接体にあたらないように注意しなければなりません。
    イ X 線撮影時には、X 線ビームを絶対に人間のいる方向に向けてはいけません。
    ウ X 線防護衣は二次X 線の大半を吸収しますが、一次X 線の遮へいには有効ではありません。このため、防護衣を着用していても、一次X 線を保定者などに向けて照射してはいけません。
    エ 大きい動物の場合には、二次X 線の発生が非常に多くなるた め、被ばく線量が高くなる可能性があり、注意が必要です。
    オ 二次X 線は、動物と撮影台からの発生が最も多くなります。そのため、通常の小動物のX 線撮影ではX 線ビームを下に向けて行うため、動物から3m 以上離れるか防護衝立の後ろに立つことによって、被ばくを防ぎます。
    カ 動物の保定は、「保定具又は医薬品により行うこと」と法令に規定されています。人が保定しなければならない場合には、防護衣と防護手袋を必ず着用し、必要に応じて甲状腺防護用具や防護眼鏡を着用します。
    キ X 線撮影は、臨床的に必要十分な枚数を計画しましょう。撮影条件の設定ミスや保定の失宜等によるX 線写真の品質低下は、無駄な撮影による被ばく線量の増加要因になります。
    ク X 線撮影の際、やむを得ず飼い主の協力を得なければならない場合であっても、保定やカセットの保持などを依頼してはいけません。飼い主を管理区域内に入れる場合には、放射線による被ばくのおそれがあることを説明し同意を得るとともに、一次X 線をあびないように適切に指示する必要があります。その際には、防護衣を着用させ、ポケット線量計等も携帯させることにより、被ばく線量を把握しておくことが必要です。
    ケ X 線撮影を行う時には、必ずX 線装置の使用記録(記帳)をつけなければなりません。記帳項目は、日付、動物の詳細、X 線撮影の場所、撮影に関わったすべての人やX 線撮影の条件などです。
    コ グリッド(リスホルムブレンデ)はX 線量の増加要因なので、通常は体厚が100mm 以上の場合に使用します。









II - 2(2) 鉛当量とX線の
遮へい能力





II - 1 放射線防護の3原則



獣医療法施行規則第16条






I - 附属資料4 飼い主等が
管理区域内に入る時の同意書
の例




獣医療法施行規則第19条

(9)防護機器・用品の管理

    ア 診療施設の管理者は、放射線防護機器・用品の管理を行う担当者を決め、適切な防護機器等の管理を実施します。
    イ 担当者は防護衣や防護手袋などの用品に、傷がないかを定期的に検査し、明らかな欠陥がある場合には交換します。少なくとも年度ごとに、傷や折り目がないか検査することが必要です。
    ウ 防護衣は大きなハンガーなどに吊して保管し、折りたたんだり、しわくちゃにしてはいけません。傷や折り目ができると、そのすき間からX 線が漏れるので、被ばくの原因となります。





II - 2(7) 防護用具の保管と
点検


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