放射線防護技術編
獣医診療現場における放射線防護の実際
2. 放射線防護用具 参考ムービーはこちら

(5)防護衝立、防護カーテン、防護シート

 透視やIVRのように、長時間被ばくを伴う作業を行う場合には、防護衝立(図6)、防護カーテン、防護シート等の使用によって、作業従事者の被ばく低減に役立ちます。各施設に最適な方法で、これらの用具を適切に組み合わせることが望ましいので、数に余裕を持って準備しておく必要があります。

(6)IVR における放射線防護

 IVR従事術者が防護衣外側の腹部や顔部に受ける被ばく線量は、ミリシーベルト(mSv)のオーダーになるとされています。散乱線は、X線照射方向に最も多く放出されますし、また、それ以外の散乱線はあらゆる方向から来ます。そこで、防護衝立、防護カーテン、防護シートを使って、テーブルの下や患畜からの散乱線や管球からの漏えいX 線を防護する必要があります。

図6 防護衝立
図6 防護衝立

 術者が露出している身体部分を防護する有効な方法は、含鉛アクリル製の板を透視台に取り付けることや、天井吊り下げ型含鉛アクリル板防護用具を設けることによって、被ばく線量を著しく低下させることができます。

 中型サイズのコート型防護衣の重量は、0.25mm鉛当量で4.1kg、0.35mm鉛当量で4.9kg、0.5mm鉛当量で6.4kgもあり、鉛当量が大きいほど遮へい効果は高くなりますが、重量も大きくなります。IVR に従事する術者の作業は、長時間かかることが多く、身体の負担が大きくなります。IVR を行う場合の防護衣は、鉛当量0.35mm 程度が限度と思われます。

(7)防護用具の保管と点検

 防護衣は折り畳むと折り目や亀裂ができ、遮へい体に損傷が起こりやすくなります。保管するときはハンガーにかける習慣をつけましょう。また、防護衣は、経年使用で表面が劣化したり、遮へい体の内部にも孔が空いたりすることがあります。定期的に検査して安全を確認する必要があります。点検方法は、目視による方法とX線の透視装置で確認する方法があります。X線写真撮影等で確認する方法は、目に見えない小さな亀裂等も発見できるので有効な方法です。


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