放射線防護技術編
獣医療における放射線防護の基礎知識
3.小動物のX線撮影 参考ムービーはこちら

(5)X 線装置の附属装置及び関連機器等

    ア 専用の撮影台が使用できない場合には、撮影に使用する台上に1mm 鉛当量以上の鉛シートや鉛入りゴムシートを、一次X 線ビームが最大となる面積以上の広さに置くことで代替します。
    イ 水平ビームを使用する場合には、カセットホルダーを垂直に保持できるホルダーと十分な遮へい能力を持つ衝立(ついたて)が必要です。
    ウ 固定式のX 線装置については、0.5mm 鉛当量以上の鉛ガラスが組み込まれた高さ2m 以上で、幅が1m 以上の防護衝立が必要とされ、防護衝立の内側に制御盤を設置することで安全を確保できます。
    エ X 線撮影が多い診療施設では、被ばく線量を減らすため、感度の高い希土類を使用したオルソタイプの増感紙及びオルソフィルムの使用を検討すべきでしょう。また、イメージングプレートによる撮影システムも有効ですが、品質の高い撮影のためにはX線フィルムシステムとの性質の違いや画像処理のテクニックが必要とされます。
    オ X 線フィルム処理のシステムは、撮影条件を決める前に確立しなければならない重要項目です。特に、現像処理は黒化度や写真品質に大きく影響するので、同一の方法で安定した条件で行う必要があります。現像液が劣化していないか、現像槽の温度は一定に保たれているかなどを毎日確認することが重要です。
     自動現像器の使用は製造者の推奨する条件で行い、定期的なメンテナンスが必要です。
 

(6)X 線装置の管理

    ア 点検
     X 線装置の管理担当者は、未然にトラブルを回避できるようにX 線装置の始業点検と終業点検を行う必要があります。
      (ア)始業点検:毎日の診療を始める前には、天井走行などX 線管保持装置の安全装置が作働するか、X 線高電圧ケーブルに亀裂や漏電等がないか、装置の異常音、異臭等がないか、X 線管の出力が校正されているか等の点検を行うことが必要です。附属資料1に示したような点検表を作成し、項目毎にチェックすると確実です。
      (イ)終業点検:終業点検も、トラブルの早期発見のために、始業点検で行った項目に準じて行いましょう。
    イ 定期検査
     定期検査は法令で義務づけられています。定期検査は、自ら実施しても構いませんが、製造者あるいは医療機器修理業の許可を得た専門業者による適切な検査を受けることが推奨されます。
    ウ 事故時の対応
      (ア)報告:何らかの事故が起きて緊急に作業を行った際には、等価線量の限度が眼の水晶体については300mSv、皮膚については1Sv を超えた場合は、関係する監督官庁に報告しなければなりません。また、放射線診療従事者は、診療を行って被ばくした実効線量が、5年ごとに区分した各期間の限度100mSv を超えた場合、あるいは年度の等価線量の限度である眼の水晶体で150mSv、皮膚で500mSv を超えた場合も同様に報告する義務があります。
      (イ)健康診断:大量の被ばくをした放射線診療従事者等には、遅滞なく医師の診察を受けさせるようにしましょう。
      (ウ)危険時の措置:X 線はX 線管への電気の供給によって発生するため、供給源となる電源を止めることによってX 線の発生を停止できます。緊急時には電源を切るなどで不測の事故を防ぐことが可能です。日頃から使用するX 線装置のエマージェンシー停止ボタンや電源ボックスの位置を確認しておきましょう。また、緊急作業時には防護衣(防護エプロン)を着用することで被ばくの低減が可能なので、X 線診療室に必ず備えましょう。
      (エ)記録:X 線診療時の被ばく事故による影響は、後から身体症状が現れることもあるので、事故時の状況を詳細に記録しておく必要があります。被ばくした日時、設定した管電圧や管電流、照射時間、X 線管の向きや被ばくした場所、遮へい体の位置など平面図を用いて記録しておきましょう。また、法令に基づく事項も併せて記録・保存しなければなりません。
    エ X 線撮影が多い診療施設では、被ばく線量を減らすため、感度の高い希土類を使用したオルソタイプの増感紙及びオルソフィルムの使用を検討すべきでしょう。また、イメージングプレートによる撮影システムも有効ですが、品質の高い撮影のためにはX線フィルムシステムとの性質の違いや画像処理のテクニックが必要とされます。 次のページへ


参考資料4
X線診療施設の管理の基本










獣医療法施行規則第17条



参考資料5
事故等の発生に伴う措置


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