放射線防護技術編
獣医診療現場における放射線防護の実際
 X 線診療に従事する場合、発生装置からの被ばくが避けられないことがあります。この場合の放射線防護とは、被ばくをゼロにすることではなく、被ばくをできる限り少なくすることです。実際のX線診療にあたっては、予測される危険を最少にして、得られる利益を最大にするように心がけることが必要です。この項では、実際の診療時にX線被ばくをできるだけ低減するために、特に重要な事項をまとめました。

1. 放射線防護の3原則 参考ムービーはこちら

 放射線防護の基本原則は国際放射線防護委員会(ICRP)に基づき、放射線作業者本人及び他の作業者、また、施設内及びその周辺に居住する一般公衆の放射線被ばくをできる限り低いレベルに保つことにあります。

 診療現場では、X 線発生装置からの放射線防護を行うことにより、身体の外からのX 線被ばくをできる限り少なくします。このように身体の外からの放射線被ばくを外部被ばく又は体外被ばくと呼びますが、これら外部被ばくの低減には下に示した3つの方法があり、「放射線防護の3原則」と呼びます。

 外部被ばくを防ぐためには、この3原則に加えて麻酔や鎮静剤を用いて動物の保定を実施し、防護の最適化を行うとともに、個人被ばく線量を測定・確認しなければなりません。

〔放射線防護の3原則〕

(1)線源と人体の間に遮へいを置く(遮へい体を用いる)
(2)線源と人体の間に距離をとる(距離を大きくとる)
(3)被ばくする時間を短くする(時間を短くする)

(1)遮へい体を用いる

 X線を減弱させるもう一つの方法として、遮へい体を用いる方法があります。
 X線などの光子が物質を通過する割合は、物質の原子番号が大きいほど小さくなります。遮へい体には、遮へい効果が優れていること、比較的安価であること、加工が容易であることから鉛がよく用いられます。

(2)距離を大きくとる

 線源からの放射線の強さは距離の2乗に反比例します(逆2乗の法則)。したがって、線源からの距離をとることが重要です。

(3)時間を短くする

 放射線による被ばく線量は、被ばく時間に比例します。通常、X 線診療を行う場合、被ばくをできるだけ避けるとともに、避けられない場合は、被ばく時間を短くすることが必要です。あらかじめ訓練をして作業に慣れ、短時間で作業できるようにしておくことが大切です。


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