放射線防護技術編
獣医療における放射線防護の基礎知識
 X線診断は、獣医療における普及が進み、動物の疾病の診断・治療に欠くことができない手段の一つになっています。動物のX線診断では、動物の保定などを行うことから、獣医師や診療補助者などの放射線診療従事者等への放射線による被ばくに十分注意する必要があります。
 このため、獣医療における放射線防護の観点から、獣医療法などの関連法規に加え、実際の獣医療現場でX線撮影などを行う際の放射線防護に関する基礎知識について、より具体的に解説しました。

1.放射線防護の基本 参考ムービーはこちら

(1)3つの基本原則

    ア 正当化:獣医療における放射線の利用は、疾病の診断・治療など明確な正当性がある場合にのみ行います。
    イ ALARPの原則:ALARPとは、AsLowAsReasonablyPracticableの略で、リスクを“合理的に実行可能な範囲で出来るだけ低くする”ことを意味しています。診療施設の開設者や管理者などの責任者は、放射線による放射線診療従事者への被ばくを、合理的に実行可能な限り低く抑えなければなりません。
    ウ 線量限度:国際放射線防護委員会(ICRP)では、放射線による人体への影響を考慮し、被ばくの上限値である線量限度を定めています。放射線診療従事者の線量限度は、獣医療法施行規則においても5年で100mSv、1年で50mSvと定められています。
獣医療法施行規則第13条


(2) 測定の重要性

 被ばくが非常に少なく、身体症状が現れていなくても、被ばくによるリスクがゼロでないという考えの下、放射線防護を行います。放射線は目に見えないので、気づかないうちに被ばくすることを防ぐため、被ばく線量を正確に測定し、把握することが重要です。

獣医療法施行規則第14条


II−4被ばく管理
参考資料3放射線の測定

(3) 放射線防護を実現するために

 診療施設で放射線診療従事者の被ばくを合理的に実行可能な範囲で出来るだけ低くするためには、X線装置や遮へいなどのハードウェアの整備と、放射線管理体制や放射線診療従事者の教育訓練などのソフトウェアの両方が機能していることが必要です。
 


Go Back  1/1  Go Next