放射線防護技術編
参考資料
3. 放射線の測定 参考ムービーはこちら

2 測定器の種類と原理

    ウ 熱ルミネッセンス線量計
     ある種の物質は、放射線を照射した後に加熱すると、蛍光を発することがあります。この現象を熱ルミネッセンス現象と言います。このような物質を熱蛍光物質といい、これに放射線が当たると相互作用により電離され、価電子帯にある電子が、励起エネルギーを得て伝導帯へ移動します。価電子帯の電子が抜け出した後にはホール(正孔)が生じ、ホールは物質中に含まれる不純物に捕捉され、蛍光中心になります。伝導帯に移動した電子は、結晶の格子欠陥、またはTm、Cuなどの活性物質による格子のひずみによって形成される捕獲中心に捕捉され、準安定状態になります。この状態の物質に、熱による活性化エネルギーを外部から与えると、電子は捕獲中心から追い出され、伝導帯に移動します。この電子が発光中心のホールと再結合する時、捕獲中心と蛍光中心のエネルギー準位差のエネルギーが、熱ルミネッセンスとして放出し、その量は当たった放射線の量に比例します。そこで、放射線を被ばくしたこれらの物質に、熱を加えて熱ルミネッセンス現象を起こさせて、その発光量を測定することにより、その物質が受けた放射線量を算出することができます。これが熱ルミネッセンス線量計(TLD:Thermo Luminescence Dosimeter)です(図8)。
図8 TLDの発光機構
図8 TLDの発光機構

    エ 光刺激ルミネッセンス線量計
     放射線や紫外線を照射すると、短時間に減衰する蛍光を発する物質があります。さらに、減衰した後に光を当てると新たな強い蛍光を発します。この蛍光を光刺激ルミネッセンス(OSL:Optically Stimulated Luminescence)と言います。

     このような物質に放射線が当たると、価電子帯にある電子が励起され、伝導帯へ移動します。価電子帯の電子が抜けた後にはホール(正孔)が生じ、ホールは物質中に含まれる不純物に捕捉され、蛍光中心になります。伝導帯に移動した電子は、蛍光中心のホールと再結合して蛍光を発します。これが放射線による蛍光発光現象で、この蛍光は短時間内に減衰します。伝導帯の電子の一部は、結晶の陰イオン格子欠陥が形成する捕獲中心に捕捉され、準安定状態になります。この状態の物質に強い光を当てると、電子は捕獲中心から追い出され、伝導帯に移動します。この電子が蛍光中心のホールと再結合する時、エネルギー準位差に相当するエネルギーがOSL 現象により発光します。その量は当たった放射線の量に比例します。

     そこで、放射線を被ばくしたこれらの物質に強い光を当て、OSL 現象を起こさせて、その発光量を測定することにより、その物質の被ばくした放射線量を算出することができます。これがOSL 線量計です。

     OSL 素子としてα−酸化アルミニウム(α−AlO)を使用します。α−酸化アルミニウムには、ダイヤモンドに次ぐ硬度を持つなど、物理的安定性があり、熱によるフェーディング(退行現象)が小さく、長期間にわたって安定しているなどの特徴があります。 次のページへ


Go Back  4/5  Go Next