放射線防護技術編
参考資料
3. 放射線の測定 参考ムービーはこちら

2 測定器の種類と原理

(3)蛍光作用を利用した測定

    ア シンチレーション検出器
     蛍光物質を検出器に利用した測定器です。放射線が入射し、放射線のエネルギー付与によって励起状態となった蛍光物質が、安定な状態に戻るときに余剰エネルギーを光として出します。この時の発光量は、入射放射線の量と比例関係にあることから、光量を測定することによって放射線量を測定できるようにしたものです。蛍光物質のことをシンチレータ、蛍光を発することをシンチレーションと呼んでいます。この動作を利用した検出器をシンチレーション検出器(図4)と呼んでいます。

     代表的なシンチレータには、ヨウ化ナトリウム(NaI(Tl))やヨウ化セシウム(CsI(Tl))等があります。蛍光の検出には、通常、光電子増倍管(PM:Photo Multiplier)が使われます。
図4 シンチレーション検出器の原理
図4 シンチレーション検出器の原理

    イ 蛍光ガラス線量計
     蛍光ガラス線量計に使用される素子は、銀イオンを含有させたリン酸塩ガラス(銀活性リン酸塩ガラス)で、放射線を受けた蛍光ガラス素子に窒素ガスレーザーの紫外線(337.1nm)を照射すると、受けた放射線の量に比例したオレンジ色(606nm)のラジオフォトルミネッセンス(RPL:Radio Photo Luminescence)を発生する性質を持っています(図5)。

     蛍光ガラス素子が放射線を受けるとガラス素材が電離され、励起された電子は価電子帯と呼ばれるエネルギーの基底状態から、伝導帯と呼ばれるエネルギーの高い状態へ移動します。移動した電子の跡にはホール(正孔)が生じます。伝導帯の電子は、ガラス構造中のAgに捕獲されAgとなって、一時的に安定な準安定状態となり、蛍光中心を形成します。一方、ホールは、いったんPO四面体に捕えられ、時間経過にともないAgと結合しAg++となり、非常に安定な蛍光中心を形成します(図6)。

     この状態の蛍光ガラス素子に、レーザの紫外線を当て刺激すると蛍光中心が励起され、そのエネルギーをRPL として発光し、元のエネルギーレベルに戻ります(図7)。このRPL を光電子増倍管で捕らえ、発光量を計測します。
図5 蛍光ガラスの原理
図5 蛍光ガラスの原理

図6 蛍光中心の形成
図6 蛍光中心の形成

図7 RPLの発光
図7 RPLの発光

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