放射線防護技術編
参考資料
1.放射線生物学 参考ムービーはこちら

7 アポトーシスとネクローシス

 細胞死には、アポトーシスとネクローシスがあります(図4)。ともに細胞の死ですが、誘導メカニズムや形態的特徴が大きく異なっています。

 ネクローシスは虚血などの病理的要因による受動的な細胞死です。ミトコンドリアが膨化し細胞が膨潤します。その後、細胞核も膨潤し、ミトコンドリアが破裂、細胞融解を起こします。この細胞融解のため、細胞内容物が流出し炎症反応を引き起こすことになります。

 一方、アポトーシスは、プログラムされた細胞死とも呼ばれ、細胞内に生じた何らかの異常を自分自身で感知することによる積極的・能動的な細胞死です(細胞の自殺)。この時、細胞死は細胞膜と核内構造変化を伴う細胞サイズの縮小から始まり、同時に細胞膜表面に存在する微絨毛の消失や、表面の平滑化などが起こります。細胞核はクロマチン構造がなくなり凝縮しますが、特に核辺縁に半月状に凝縮が多くなる傾向があります。核全体の凝縮・縮小は激しく、その結果、細胞全体のサイズの縮小や細胞質内に空胞が出現します。膜の水疱形成と核クロマチンの凝集・断片化が進むと、細胞内容物は膜につつまれた小胞(アポトーシス小体)となります。細胞はアポトーシス小体に急速に断片化され、たちまち近くの貪食細胞に処理されるため、炎症反応は起こさないのが大きな特徴です。

図4 アポトーシスとネクローシス
図4 アポトーシスとネクローシス


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