放射線防護技術編
参考資料
1.放射線生物学 参考ムービーはこちら

5 酸素効果

 酸素の存在下では、無酸素の時よりも放射線の生物学的効果が大きく、X 線などによる照射効果は最大で約3倍も増大します。この現象を酸素効果と呼んでいます。逆の見方をすれば、生体組織内の酸素分圧の低い場所では、細胞は放射線感受性が低くなり抵抗性となります。特に、腫瘍組織内の血管から遠い腫瘍細胞は実際に放射線抵抗性であり、放射線治療の効果を上げるために、さまざまの工夫が行われます。
 

〔ちょっと高度な酸素効果の知識〕

  酸素効果の起こる原因は、酸素分子は非常に強力な酸化剤であるため、酸素の存在によってラジカル生成量も増加します。これには、 Oや HOの生成が関与することがわかっています。

  しかし、水溶液中の放射線によるラジカルの量だけでは、酸素効果を完全には説明できません。生体内ではラジカルを捕捉する酵素や分子が多数存在しますが、酸素が存在すると、放射線によって生じたラジカルが生体内のラジカル捕捉分子と反応するよりも素早く酸素と反応し、この結果、酸素存在下では損傷分子が多く生じます。また、この損傷は生体分子では修復が難しい有機過酸化物などが生成され、放射線感受性が増強されると考えられています。


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