放射線防護技術編
参考資料
1.放射線生物学 参考ムービーはこちら

4 放射線による水分子の反応

(1)ラジカルの発生

 生物体には必ず水が含まれており、しかもその量は多量であり、およそ80% にも達します。したがって、放射線の生物作用には水との相互作用が重要な意味を持つことがわかっています。

 特に、放射線が水と反応した時に生成されるフリーラジカル(活性遊離基)が生体に大きな影響をもたらします。通常の分子は共有結合をすることにより安定していますが、このうち1個の電子を失い、不対電子となると分子は不安定になり、非常に化学的な反応性に富むようになります。この不対電子を持つ化学種は活性が強いので、ラジカルと呼ばれます。
 

(2)水分子から発生するさまざまなラジカル

 まず、放射線によって最も多く起こる反応は水の電離(イオン化)です。

 また、水分子は放射線によって励起されます。励起された水分子の状態についてはまだ十分にわかっていませんが、この分子が分解してラジカルが生成されると考えられています。

 ここで、不対電子を持つラジカルを『 ・』を付けて表現します。

 HO→・HO+e ・ HOは非常に不安定であるので、短時間で・HO→H+・OHまたは・HO+HO→HO+・OH となり、・OH ラジカルが生成します。・OH ラジカルは比較的長時間液中を浮游して、強い酸化剤として作用します。

 また、電子eは多数の水分子と反応し、eのまわりに水分子の正電荷部分が囲むように配列した水和電子が生成され、これも比較的長時間液中を浮游します。水和電子は強い還元剤として作用します。

 この反応性の強いラジカルや水和電子が、生体分子、特に核酸のDNA などに重大な傷害を与えます。


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