放射線防護技術編
参考資料
1.放射線生物学 参考ムービーはこちら

1 放射線の発見と医学利用の歴史

図1 レントゲン博士
図1 レントゲン博士

(1)X 線の利用と放射線障害

 1895年11月8日、ドイツのヴェルツブルグ大学の教授であったレントゲン博士(図1)は、物体を突き抜ける不思議な光線を発見しました。レントゲンは、この不思議な光線に数字で未知数を表わす文字X を用いて「X線」と名付けました。X 線は、発見の翌年の1896年にはさっそく医学に応用され、放射線診断学が誕生しています。以来、X 線は外科への応用はもちろん、あらゆる医療へ貢献し、診断だけでなく放射線治療の分野でも利用されています。しかし、X 線は便利である反面、職業的に放射線を取り扱う人々に放射線障害が認められるようになりました。例えば、自分の手を何度もX 線透視した人は、照射2〜3週間後に爪の根本の皮膚に発赤の症状が発生しました。

 また、X 線以外にも、鉱山の鉱夫にラドンによる肺がんが多発したり、ラジウムを含んだ夜光塗料を塗る職人に骨肉腫や白血病が多数発生したりして、放射線障害が広く知られるようになりました。

(2)放射線の治療への応用

 その後、放射線の生体への影響に着目し、臨床で放射線が放射線治療にも使われるようになってきました。その中で、医療被ばくを受けた患者に悪性腫瘍の発生がみられるようになり、放射線治療では放射線障害を起こさないような照射法が研究されるようになりました。

(3)放射線障害の研究とその克服

 最近では、低線量被ばくの障害も問題視されるようになってきました。これは、大線量の照射により局所的な障害が発生するだけでなく、それよりもはるかに少ない低線量被ばくでも統計的に悪性腫瘍の出現頻度が高くなることがわかってきたためです。
 現在、動物の医療の現場においても放射線を利用する機会が非常に増加しているため、被ばくの機会が増加しています。したがって、放射線管理を厳重に行うことに加えて、放射線による生体への影響を十分に理解することが放射線の安全利用や効果的な放射線治療に必要です。


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