放射線防護技術編
獣医診療現場における放射線防護の実際
6. 健康診断 参考ムービーはこちら

 放射線従事者に対する健康診断は、放射線管理の一環として行われるだけでなく、広く産業衛生の観点で実施されるものです。

 放射線を取り扱う者に対する健康診断の目的は主に二つあります。一つは、放射線業務に先だって、実施する者の健康状態を評価して、放射線業務に従事することが適当であるかどうかを判断するためであり、もう一つは、放射線作業に従事する前の健康状態の医学的所見を求めておき、放射線作業で何らかの身体的変化が生じた場合、その原因が放射線の被ばくによるものかどうかを判定する基礎資料にするためです。その意味でも、定期的に受診することは不可欠です。また、法令上健康診断を省略している場合であっても、内部被ばくしたり、汚染したり、線量限度を超えて被ばくしたおそれがある場合には直ちに健康診断を行う必要があります。

 所管法令によって健康診断の実施項目や内容に若干差がありますが、概ね以下のとおりです。

(1)健康診断を受ける時期

  • 最初に管理区域に立ち入る前
  • 立ち入った後は1年を超えない期間ごと

(2)健康診断の方法

  • 問診
    放射線(1MeV 未満のエネルギーの電子線及びX 線を含む)による被ばく歴の有無、作業場所及び内容、期間、被ばく線量、放射線障害の有無など
  • 検査又は検診の部位と項目
    • 末しょう血液中の血色素量又はヘマトクリット値、赤血球数、白血球数及び白血球百分率の検査
    • 皮膚の検査
    • 白内障に関する眼の検査

 ただし、(2)の健康診断では、2. の a、b、c の部位又は項目については、医師が受ける必要がないと認めた場合に限り省略できるとされています。つまり、(1)の「1. 最初に管理区域に立ち入る前」の健康診断では、a、b は必ず受け、また、c については省略できます。1年間に受けた実効線量が5mSvを超えるおそれがない者に対する健康診断については、(2)の 2. の検査については、医師が受ける必要がないと認めた場合は受けなくても良いとされています。

 なお、電離放射線障害防止規則(以下「電離則」という。)や人事院規則10−5(職員の放射線障害の防止)は、検査内容に多少の違いがありますが、複数の法律で規制を受ける職種であれば、厳しい法令に従って実施することとされています。
 

(1)健康診断の結果の記録

  電離則第56条に、「事業者に対して、上記の健康診断の結果に基づいて、電離放射線健康診断個人票(様式第1号)を作成し、これを30年間保存しなければならない。」と規定しています。
 

(2)健康診断結果報告

  電離則第58条に、「事業者は、第56条第1項の健康診断(定期のものに限る。)を行ったときは、遅滞なく、電離放射線健康診断結果報告書(様式第2号)を所轄労働基準監督署長に提 出しなければならない。」と規定して、報告義務が課せられています。
 

(3)健康診断等に基づく措置

  電離則第59条に、「事業者は、電離放射線健康診断の結果、放射線による放射線障害が生じており、若しくはその疑いがあり、又は放射線による障害が生じるおそれがあると認められる者については、その障害、疑い又はおそれがなくなるまで、就業する場所又は業務の転換、被ばく時間の短縮、作業方法の変更等健康診断の保持に必要な措置を講じなければならない。」と規定しています。したがって、事業所の責任者は、この点を考慮した就業対策を立てる必要があります。


Go Back  1/1  Go Next