放射線防護技術編
参考資料
1.放射線生物学 参考ムービーはこちら

24 胎内被ばくの影響

 放射線の人体に対する影響のうち、発癌以外で重要なものは胎児の発育障害です。放射線の胎児への影響としては、致死作用、奇形、発育遅延があり、放射線の線量と被ばく時期によって発育段階が左右されることが知られています。

 実験動物のデータは多く蓄積されています。着床前期の被ばくにおいては致死作用が最も発現しやすく、奇形や発育遅延は観察されません。0.15Gy でも受精卵が死んでしまいます。器官形成期の被ばくではさまざまな奇形や発育遅延も観察され、出生後に死亡することもあります。0.25Gy 被ばくでは障害は認められませんが、1Gy の被ばくでは発育遅延が認められます。胎生期の被ばくでは明らかな奇形は認められず、この時期に障害を認めるにはかなり高い被ばく線量が必要とされます。

 一方、ヒトのデータは少なく、原爆被ばく者からの胎内被ばくの主症状は小頭症です。しかし、小頭症が認められるのは広島の被ばく者であり、長崎の被ばく者には認められていません。また、自然発生する奇形の頻度は全人類の5% にも達するので、少量の放射線の被ばくによる奇形はほとんど起きないであろうと考えられてきています。


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