放射線防護技術編
参考資料
1.放射線生物学 参考ムービーはこちら

16 細胞周期とチェックポイント

 細胞が分裂を繰り返して増殖するとき、分裂から分裂までの1サイクルを細胞周期と呼び、細胞周期は4つの時期に区分されます。

 DNA が複製される時期をS 期(合成期)、そこから二つの細胞に分裂するのがM 期(分裂期)と呼びます。M 期からS 期までの間にG1期(間期1)、S 期からM 期までがG2期(間期2)があり、G1期やG2期でも細胞は活発な代謝を行っています。

図13 細胞周期
図13 細胞周期

図14 細胞齢(反応の形)
A はハムスター細胞で代表されるG1期の短い細胞、B はHeLa 細胞のようにG1期の長いもの、時間のスケールを合わせると、S 期の長さは両者で変わらないことがわかる。
(Sinclair WK:Dependence of Radiosensitivity Upon Cell Age. In Proceedings of the Carmel Conference on Time and Dose Relationships in Radiation Biology as Applied to Radiotherapy. Upton, NY, BNL Report50203(C-57),1969, PP.97-107より)

図14 細胞齢(反応の形)

 細胞周期の各時期では放射線感受性が異なることが知られており、放射線生物学上、大変重要です。細胞は分裂期またはその付近で最も感受性が高く、S 期末期で最も抵抗性であるのが一般的です。G1期がはっきりした長さを持つ細胞では、その早期に抵抗性の時期があり、G1期の終わりに向って感受性になります。なお、G2期は比較的感受性を示すことが多いようです。

 放射線被ばくによって細胞周期が停止または遅延します。これは、DNA 損傷を受けた細胞が細胞周期の次の時期へ移行する前に損傷がないかどうか確認し、修復の機会を作るためと考えられています。これを細胞周期チェックポイントと呼び、G1チェックポイント、G2チェックポイント及びM 期におけるスピンドルチェックポイントが知られています。このチェックポイントをすり抜けた細胞やチェックポイント機構のない細胞は、染色体異常や突然変異を引き起こします。

図15 細胞周期チェックポイント
図15 細胞周期チェックポイント


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