放射線防護技術編
参考資料
1.放射線生物学 参考ムービーはこちら

12 放射線による細胞増殖死と間期死

 放射線による細胞致死効果の評価には細胞分裂の破たんを示す増殖死が最も重要です。皮膚、腸上皮、骨髄及び癌細胞は分裂を繰り返しています。しかし、細胞に放射線が照射されたとき、細胞は1回ないしは数回分裂した後、分裂を止めてしまいますが、分裂を止めた細胞でも核酸・蛋白合成などの活動は継続しています。つまり、細胞の代謝は継続しつつも、分裂する能力を失っている状態です。この状態を増殖死と定義しています。

 一方、間期死は、細胞が分裂することなく不活化し、死ぬことと定義されています。大線量の放射線を浴びるときの細胞機能が失われることや、小線量の放射線によるリンパ球の細胞死は間期死に区分されます。

図7 放射線による細胞の増殖死
図7 放射線による細胞の増殖死

 間期死は、受動的・病理的な細胞死をネクローシス(壊死)、能動的・生理的な細胞死をアポトーシスと呼んでさらに区分されます。

〔やや詳しいコロニー形成法の知識〕

  細胞の増殖死を定量するために用いられている方法はコロニー形成法です。この方法で 細胞が増殖を繰り返せば、シャーレ上に細胞塊(コロニー)を形成します。放射線を照射していない場合、細胞は増殖してコロニーが大きくなり、コロニー内を観察すると増殖が活発に行われているため、分裂中の細胞が観察されます。一方、照射を受けた細胞では大きなコロニーは形成されず、コロニー内の細胞には複数核の細胞や巨細胞などが観察されます。


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